一言コラム of JAMI

Vol.2

「医療通訳」プログラムの説明会開催



去る2014年4月9日と11日に、大阪大学の吹田キャンパスと豊中キャンパスにて、「大学院等高度副プログラム」の合同説明会がありました。「大学院等高度副プログラム」とは、専攻とは異なる研究科の科目も修得できてしまう、とっても「お得」なプログラムです。本年度、特定のテーマに沿って科目が組まれているプログラムはなんと46種類! 研究テーマの関連分野を学びたい人や視野を広げたい人にはもってこいです。
 さて、この高度副プログラムの中でとりわけ異彩を放っているのが「医療通訳」プログラム。プログラムの運営は医学系研究科(保健学専攻)ですが、参加している研究科は人間科学研究科、言語文化研究科、GLOCOL(グローバルコラボレーションセンター)、薬学研究科、CSCD(コミュニケーションデザイン・センター)とまさに学際的。医療通訳士を目指す人はもちろん、保健医療関係者や医療通訳コーディネーターなども受講生として想定されています。
 今回のガイダンスでは、「医療通訳」プログラムを修了している人間科学研究科博士後期課程在籍の小笠原理恵さんが大活躍。明るい笑顔と巧みなセールストーク(?)でたくさんの院生を惹きつけ、受講をよびかけてくださいました。興味を持って会場に来て下さった方は医学系研究科の方々が多く、熱心に質問をしていただく場面も。
 そんな小笠原さんがプログラム随一のセールスポイントとしてあげるのが、修了生の有償ボランティア制度。今年から大阪大学医学部付属病院の国際医療センターと「医療通訳」プログラムの連携体制が強化され、即戦力と見なされた学生にはセンターで医療通訳士としてデビューするチャンスが!
「このような経験は学生さんの就職活動に有利になります。プログラムを修了したというだけでなく、ひとつの業績として認めてもらえるからです」
 医療通訳士の養成では、座学もさることながら実習の重要性が問われます。阪大の「医療通訳」プログラムでは、多文化医療の最前線である国際医療センターで現場力を磨くことができるのです。
 あなたも「医療通訳」プログラムを受講してみませんか?





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一言コラム ぶりっじ

Vol.1

視察報告:米国マサチューセッツ州ボストン市における移住女性へのDV支援

長崎県立大学大学院人間健康科学研究科教授 李節子
医療通訳士協議会副会長

2009年9月、ボストン市にあるアジアン・タスク・フォース・アゲンスト・ドメスティック・バイオレンス(Asian Task Force Against Domestic Violence、以下ATASK)を訪問してきました。ATASKは、ドメスティック・バイオレンス(以下DV)の被害にあっている、アジア系の移民・難民女性を中心とした救済を目的に1987 年に設立された非営利団体です。

DV は基本的人権の侵害という考えのもとに、DV 被害者の米国滞在の合法性の有無を問わず広く救援活動を続けており、DV 被害者からの問い合わせは、ボストン市を中心にマサチューセッツ州のみならず、全米、時には海外に及ぶこともあるそうです。

言葉や文化の壁のために必要なサービスを受けられないアジア系女性のために、複数のアジア系言語に対応できるよう、スタッフの多くはバイリンガルで、その中には日本人スタッフも含まれていました。対応言語は、日本語、北京語、広東語、ベトナム語、クメール語、ヒンズー語、ネパール語、韓国語などです。また、その国の言葉を話すだけではなく、被害女性の文化的背景を理解しているスタッフが、きめの細かいサービスを提供できるような体制がとられていました。

オフィスに入ってすぐのところには、多言語で「身近な人の暴力におびえた日々を過ごしていませんか…」と書かれた多言語のパンフレットが置かれてありました(写真1)。

ボストンはヨーロッパからのアメリカ移民の歴史が色濃く残る街並みで、多民族社会の玄関口のような港町でした(写真2)。大西洋からとれるロブスターや牡蠣がとても有名です。私は米国在住日本人女性と一緒に新鮮な牡蠣を食べながら、お話しを聴き、「DV問題については、女性の心と身体の健康被害に対応でき、カウンセリングもできる女性の医療通訳士が必要だなあ…。」とつくづく感じました。



bridge_1.jpg写真1:ATASKが作成・配布している多言語のパンフレット boston.bmp写真2:ボストンの海辺にあるレストランアーケード

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